NICUに子どもが入った親御さんたちへ

私の初めての子どもは出産直後に呼吸ができなくなり、重症新生児仮死でNICUへ入院しました。低酸素性虚血性脳症、肺出血も併発しました。それでも今は元気におっぱいを飲んで過ごしています。

NICUでは赤ちゃんへのケアは重点的に行われており、親のケアとしては臨床心理士さんがいたりしますが、それでも親へのサポートは十分とは言えないと思います。

NICU 親 サポート」等の言葉で検索すると分かりますが、出てくるのはほとんど論文です。私たちに必要なのは、学術的な分析ではなく、当事者を本当に支えてくれる言葉や仕組みです。私が何か書くことで、少しでも支えになれれば幸いです。

 

1.自分を責めないで

NICUに我が子が入ることは、親にとってやりきれないことです。どれだけ苦しいことか。子どもが自分のそばから離れ、入院してしまうことで、親である私たちはもう十分傷ついています。その上でさらに自分を責めて、自分の心を傷つける必要は全く無いです。親と子どもは、出産を命がけで乗り越えてきた家族です。お父さんお母さんが自分の心を責めて責めて胸を痛めることを、赤ちゃんは望んでないはずです。自分の至らなさを探さなくて大丈夫です。頑張っている赤ちゃんのそばにいてあげて下さい。

 

2.毎日NICUに通っても、間が空いても良い

生まれたての我が子が親のそばから離れて過ごすことを思うと、毎日できる限り会いに行きたくもなります。それは親としての愛情の証です。一方で、体や気持ちが辛く毎日は無理だ、と思うのも自然なことです。私は毎日通わず、二日に一回程度でした。でもそれは、いつか必ず子どもが家に帰ってくる日がやってくる、親子で長い人生を過ごせるようになる、だからその時に向けて自分の体を十分回復させようと思ったからです。人から見てどうかは分かりませんが、十分な愛情と覚悟の上で行動したと思います。私以上にもっと間が空くことになる人もいると思います。でも、それでいいと思います。

会えた時は触れるところを十分触って可愛い我が子の体を堪能したり、帰る時に「次はいついつ来るよ、だからそれまで安心して待っててね」と声をかけてあげたりする方が価値的ではないかと思います。辛くなるほど頑張るより、会えるのが楽しみに感じられる頻度で通って良かったと思います。

 

3.目の前の現実だけにフォーカスする

私の子はお腹の中にいた時、元気に動き回っていました。それが出産後は低体温療法を受けるために薬で眠らされ、我が子に会ってる間も胎動を思い出すと体が震えるほど涙が出てきました。また、退院した後でもちょっと動きが鈍かったりすると心配になり、将来のことを想像してやきもきしてしまったりします。でも、過去は事実として過ぎ去ったことであり、未来はまだ起きてもいない現象です。目の前の我が子のことだけに集中して、夢中になって下さい。

 

4.医者は治療、親は回復

NICUにいる医師や看護師さん達は医療のプロです。一方親の私たちは、子どもが苦しんでいてもまず手を出すことはできません。何かしてあげたくても子供を思うと怖いし、治療をするという点では無力です。ただ、回復については親には絶対に誰もかなわないです。私の子は、母である私が近くに来て触っている時が一番心拍が上がると言われました。我が子の姿に一番傷つき涙を流す人間は親です。普通の人は入院している他人の赤ちゃんの姿を見たら、心配はしても傷つきはしないでしょう。赤ちゃんからしてみたら、それだけ必死に自分のことを追い求めてくる人に一番安心感を抱くのではないでしょうか。心拍といった分かりやすい数字で表れなくても、愛情をもって接することは莫大な影響を赤ちゃんに与えるはずです。また、日が経てば保湿剤を塗ったりオムツを替えるといったケアを親でも少しずつできるようになります。「手がカサカサだけど大丈夫かな」とか「オムツを替えたいけど一緒にしてもらいたい」とか、気になったことは看護師さんに伝えて大丈夫です。そもそも細かな要望はこちらから尋ねないと看護師さんも動けませんし、担当看護師は毎日変わるので、気になる度に伝えるのが現実的です。

 

5.世間体は捨てた方が良い

担当看護師に質問や要望を毎度伝えたら嫌がられないか、通院したり子どもの姿を見るのが苦しいなどと話したら冷たい目で見られるのではないか、と色々想像するかもしれません。当たり前の感情だと思います。でも私はNICUに子どもが入って、頭の中で想像する世間体は、自分を責めはするけど助けはしないのだと痛感しました。

迷惑にならないか気になるなら、忙しくなさそうなタイミングで話しかけたり、自宅でノート(ストレスで非常に忘れっぽくなったのでノートを用意するのはおススメです)に聞きたいことや医師の説明を書きだしておいたりすれば、周りの負担も減らせるし自分の要望も伝わりやすくなります。また、心理士さんはケアをするのが仕事です。自分の心のうちを吐露するのが苦しい、でも抱えるのも苦しい、という場合は話してしまった方が楽です。家事も手抜きして寝て良いです。周りが見たらのんびりしてるように見えるぐらいで丁度いいです。私の場合、自分が楽になることで結果的に子どもに笑顔を向ける余裕ができました。

 

6.意外と辛かったこと

体の面で意外と辛かったのはトイレと食事です。NICUではどちらも容易にできません。一度トイレや食事のために病室を出ると、もう一度入室するのがかなり面倒です。その上病室は室温が高く設定されていて、暑くて長くいると体力を使います。お見舞いに行くときは冷たい飲み物と手が汚れにくい菓子パンなどの軽食をあらかじめカバンに入れて、長めに休憩して食べるようにすると楽でした。

心の面で辛かったことは連絡です。事態を伝えたい方々には早い段階で連絡し、その後も定期的に伝えていましたが、子どもが回復し始めた頃になるとどっと疲れてしまいました。心配してくれている分現状報告をしたいのですが文章を考えるのに疲れてしまい、簡潔に報告すると伝わらない上失礼だし、でも頑張って丁寧に報告したら余裕があると思われてしまいしんどくなって誰かに相談しようと思ったらまた一から色々説明しないといけない…

この連絡疲れのスパイラルは非常にしんどいので、「落ち着いた時に連絡します」等、あらかじめ予防線を張っておけば良かったと思いました。私の場合仲の良い友人の子が偶然にもNICU卒業生で、友人に色々と話す中で共感してもらったり気持ちを代弁してもらうことでだいぶ救われました。NICUに子どもが入院した苦しみは独特なもので自分の親でも全然分かってもらえないことが多々あったので、もし可能ならNICU内で友人を作るのを勧めます。

 

最後に

赤ちゃんにとって、お父さんお母さんは太陽です。地球は太陽の周りをまわります。太陽が輝けなければ、地球の植物も、動物も、元気に成長することはできません。親が振り回されてはいけません。私たちがニッコリ笑いかければ、入院している赤ちゃんは安心して輝くのです。また、心配して流す涙も大地を潤す雨のように赤ちゃんの心に降り注ぎます。私は喜びと悲しみの両方が、この苦しみを乗り越えるために必要なのだと思いました。一つ一つの出来事はいつか思い出になります。私たちは自分の人生の舞台を演じきっているんだと誇りを持って、日常を大切に、我が子を可愛がって過ごして下さい。